東京都

年収の壁で働き控え、
してない?

「年収の壁」で働き控え、していませんか?
「年収の壁」という言葉を耳にしたことがある方も多いかもしれませんが、具体的な内容を皆さんは知っていますか?実際に「年収の壁」について理解できている人は全体の約3割という結果に対し、「年収の壁」を意識して働いている人は全体の約5割というデータもあります。
  • 東京都産業労働局 いわゆる「年収の壁」に関する都民意識調査(令和6年3月)より
「年収の壁」の内容を知っていますか? YES 28.1% NO 71.9% 「年収の壁」を意識して働いていますか? YES 49.2% NO 50.8% 「年収の壁」の内容を知っていますか? YES 28.1% NO 71.9% 「年収の壁」を意識して働いていますか? YES 49.2% NO 50.8%
賃金上昇に伴って、ますます働く時間を制限しようとしている方もいらっしゃるかもしれませんが、「年収の壁」を意識して、働き控えをすることがあなたにとって最適なのか、今一度考えてみませんか?
まずは「年収の壁」について理解し、自分にはどの働き方が一番あっているのか見ていきましょう。
いわゆる「年収の壁」って何?
  • 説明をわかりやすくするために、「夫の扶養に妻(自分)が入る・外れる」という仮定で記載しています。
    夫と妻が逆になっても同様です。
年収100万円の壁は、住民税。年収103万円の壁は、住民税と所得税。年収106万円の壁は、住民税と所得税と条件付き保険料。年収130万円の壁は、住民税と所得税と保険料。年収150万円の壁は、住民税と所得税と保険料と控除減少。年収201万円の壁は、住民税と所得税と保険料と控除なし。
1.年収100万の壁→年収100万円を超えると「住民税」が発生
住民税の金額は年収によって異なります。 年収100万円以下の方は住民税が発生しません。
  • 住民税=市民税・県民税
2.年収“103万円”の壁→年収103万円を超えると「所得税」が発生
所得税の金額は年収によって異なります。 年収103万円以下の方は所得税が発生しません。
3.年収”106万円”の壁→年収106万円以上は「保険料(被用者保険)※条件付き」が発生
条件付き被用者保険の金額は年収によって異なります。
被用者保険とは事業主から雇用されている人が加入できる保険で、今回の記事の中では、厚生年金と健康保険(医療保険)を合わせて、「被用者保険」とします。
今まで夫の扶養に入っていた場合や年収によっては、手取りが減る可能性がありますが、被用者保険に加入すると後々、受け取れる年金額が増えるなどの様々なメリットもあります(詳細は後述)。
  • 条件内容:2024年10月より勤務先の企業の従業員数が51名以上、週の勤務時間が20時間以上で2ヶ月を超えて働く予定がある方(学生を除く)に限り、年収106万円に達すると住民税と所得税に加え、被用者保険が発生します。
4.年収”130万円”の壁→年収130万円以上は「保険料(国民健康保険、国民年金)」が発生
「国民年金」は一律203,760円/年です。「国民健康保険」の金額は年収によって異なります。
5.年収”150万円”の壁→年収150万円を超えると控除が減少
夫の扶養に入っている場合、年収150万円から徐々に夫の扶養控除額が減っていき、年収201万6千円を超えると扶養から外れることになります。
それでも、保険(被用者保険)に加入するメリット
年収106万円の壁にさしかかる際、保険(被用者保険)料を高いと感じている方もいらっしゃるかもしれませんが、実は加入するメリットもたくさんあります。
メリット1:老後の受け取り年金額が増える
老後に受け取る年金には、基礎年金と厚生年金があり、どちらも原則65歳以降、一生涯もらえます。
被用者保険に加入することで、基礎年金に加え、厚生年金も受給することができます。
平均年金受給額
税金に関するご相談、社会保険に関するご相談、ライフプランに関するご相談、「年収の壁」に関するその他のご相談 税金に関するご相談、社会保険に関するご相談、ライフプランに関するご相談、「年収の壁」に関するその他のご相談
  • 令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況 より作成
  • 基礎年金は満額受給できるものと仮定
厚生年金は、支払った厚生年金保険料と加入年数に応じて将来の受取額が決まるので、今から1年でも2年でも多く加入した分、老後に受け取る年金を増やすことができます。
  • 厚生年金を受給するためには老齢基礎年金を受け取るために必要な受給資格期間(10年)を満たしており、かつ、厚生年金の被保険者期間が1か月以上あることが必要です。
メリット2:傷病手当金がもらえる
もし病気やけがで働けなくなった場合、健康保険から傷病手当金がもらえます。働けない期間も一定の収入が得られるのは、嬉しいポイントです。
  • 給付の対象となるのは、休業4日目から、通算で1年6カ月まで。金額は、過去12カ月の平均給与の3分の2で、対象となる日数分を受け取ることができます。
メリット3:出産手当金がもらえる
出産の際に産前・産後休業を取得でき、その間は出産手当金がもらえます。産前・産後休業は、出産予定日前6週間、出産の翌日から8週間で、出産手当金の金額は傷病手当金と同じ計算式で算出します。

被用者保険の中身を知った上で、加入有無を検討してみましょう。
妻の就業パターン別 世帯の生涯収入
先ほど月額の手取りについて紹介しましたが、働き方によって生涯年収はどのように変わってくるのでしょうか?
妻が生涯同じ職場で​働き続けた場合は、約5億1000万円​。妻が出産で31歳に退職、41歳で再就職した場合(年収300万)​は、約3億8000万円​。妻が出産で31歳に退職、41歳で​パート再就職した場合(年収100万)​は、約3億5000万円​​。妻が出産後31歳で​退職した場合​は、約3億2000万円​。
  • 夫婦ともに22歳から就職していて、年金受け取り年齢は65歳として試算
  • 夫は35歳時点で年収600万円(54歳まで一定のベースアップを考慮 55歳で昇給停止)妻は31歳までは年収は夫と同様。
  • 妻が再就職の場合、夫婦ともに64歳まで就労。退職金は考慮しない
  • 東京都「東京くらし方会議」の試算から
「1.妻が生涯同じ職場で働き続けた世帯」と「4.妻が出産後退職した世帯」とでは、生涯収入に約1.9億円の差が生じることがわかります。また、妻が出産を機に退職し、10年間の育児期間を経て再就職した場合に、「年収の壁」を意識しないで働く「2. (年収300万円)世帯」と、「年収の壁」を意識して働く「3. (年収100万円)世帯」でも生涯にわたり収入に差がついています。
「年収の壁」についてもっと知りたい方へ
ここまで色々紹介してきましたが、結局私の場合はどうすればいいの?と疑問に思っている方もいるかもしれませんね。そんな方は東京都が実施している「年収の壁」に関する支援をチェックしてみてください。電話やオンラインまたはメールで、社会保険労務士、税理士、ファイナンシャルプランナーといった専門家があなたの相談にのってくれます。
都内在住・都内勤務の方
本人又は同居家族の「年収の壁」に関する以下のご相談を受け付けます。
また随時オンラインセミナーも開催しており、「年収の壁」の基礎知識から、キャリア形成の重要性や被用者保険に加入するメリットまで専門家が詳しく解説してくれます。
  • 各回で専門家やテーマが異なります。
詳細はこちらをご覧ください。
https://nenshunokabe.metro.tokyo.lg.jp/
自分にあった働き方を考える
大事なことは「年収の壁」について正確に理解し、「年収の壁」を超えることのメリット・デメリットを認識することです。「年収の壁」を超えると手取りが減ってデメリットしかないと思っていた方も、被用者保険に加入した際のメリットなどを考慮すると実は扶養を外れて働くという選択肢が自分にはあっていると感じた人もいるでしょう。正確な知識をもった上で、自分のライフとキャリアのバランスを設計していきましょう。